二次災害 – リスクが高まるなか誤解を生む名称

スイス・リー・インスティテュート発行のシグマ調査レポートによると、2018年の自然災害および人災による保険損害額は850億米ドルに上り、単年度では過去4番目の累計損害額を計上しました。2018年は、2017年に発生したハリケーン「ハービー」「イルマ」「マリア」のような大規模災害はありませんでしたが、二次災害が甚大な被害を生み、被害額を大幅に押し上げました。

二次災害の公式な定義は定まっていませんが、保険業界では雹(ひょう)災、鉄砲水、トルネード、地滑り、干ばつ、山火事などの頻度が高く軽度から中程度の損失事象を指しています。多くの場合、熱帯低気圧に伴う洪水、液状化現象、地震による地滑りなどのように、一次自然災害に伴って二次的に発生しています。  

被害損失の主要要因として二次災害の存在感は増すばかりです。2018年には、二次災害と一次災害の余波とが自然災害に関連する全保険請求額の62%近くを占めました。過去2年間、こうした災害が保険損害額の50%を上回っており、一部の重大な自然災害損失の原因にもなっています。例えば、ハリケーン「ハービー」に伴うヒューストンでの洪水(2017年)やカリフォルニアの記録的な「キャンプ・ファイア」山火事災害(2018年)、オーストラリアを猛襲したサイクロン「デビー」(2017年)、西日本で起きた台風「プラピルーン」の勢力拡大に伴う記録的な洪水災害(2018年)などが挙げられます。オーストラリアなど、歴史的に二次災害が自然災害損失の主要要因となっている国々もあります。

一次災害と異なり、二次災害は場所を問わず広く発生する可能性があります。例えば、集中豪雨とそれに伴う洪水は、氾濫原や沿岸地域から遠く離れた場所で発生する場合もあります。その結果、都市化が急速に進む地域では二次災害の脅威が増しています。舗装区域の広がりに伴い、雨水は地表に吸収されることなく舗装面を移動し、水位が上昇します。

さらに、地球温暖化によって地表面の乾燥が進み、山火事や干ばつの危険性も高まっています。降水パターンも変化しており、熱帯低気圧がもたらす降雨や、海水面の上昇に伴う猛烈な高潮の発生率も増加しています。

異常気象が大規模災害に発展するのは人口が極めて密集する地域に限られます。ところがアジアでは都市化が急速に進むとともに人口も増加しており、大規模な損害の発生率が数倍に膨れ上がっています。災害にさらされるホットスポットが新たに登場し、大規模災害が発生するまで人々はその存在に気付かない場合が多いのです。

二次災害による被害を軽減する – 課題と機会   

従来、大規模自然災害保険と大規模災害リスクに備えた保険料率算定とに多大な影響力を及ぼしてきたのは、一次災害による損害の度合いでした。しかし、2018年と2017年の実績を見ると、二次災害の保険損害額が大きな割合を占めています。そのため、再/保険会社は、リスク評価、モニタリング、モデリング・ツールの質を向上するだけでなく、二次災害リスクの評価およびモデリングが抱える複雑性を克服するための戦略を策定する必要があります。

二次災害は場所を選ばず発生するうえに局地的な発生傾向があり、人間の介入(人間の手による山火事の発生など)に大きな影響を受ける場合があるため、モデリングは相対的に困難です。都市化が急速に進み、気候変動が起きる現代にあって、過去の損失データに基づいて地域の特定、保険料率の算定、リスク引受を実施する従来の手法では十分に適切な結果を得ることは望めません。したがって、引受とリスク管理のためのリスク評価の開発においては将来予測的な傾向を考慮に入れ、現在の気候状況および構築環境を適切に把握することが極めて重要になります。  

従来の大規模災害(CAT)モデリング手法に機械学習やソーシャル・メディアなどの先端技術/データを効果的に活用し、確度の高い二次災害ツールを開発する必要があります。さらに重要なことに、元受保険会社と再保険会社、顧客だけでなく、産業界および公共部門のパートナーが連携して共同エコシステムを構築し、バリューチェーン全体でのデータ取得と新たなリスク評価手法への投資を実現することが求められています。  

衛星画像やモバイル・データなどの地域に適した新手法を開発して気象関連の二次災害に起因する地域リスクを評価することで、幅広い保険商品や販売ターゲットを絞ったCAT保険の開発に必要な知見を得ることができます。ジュネーブ協会が2018年11月に発行したレポートでは、二次的な影響を把握するために気候モデルと基幹インフラストラクチャへの影響度とを大規模災害モデル内で統合して損失軽減の機会を創出することが推奨されています1

同時に、当社のシグマ調査レポートは、保険業界が補償ギャップを埋めるための重要な道筋を示しています。昨年度は二次災害による損害額の半分しか付保されていませんでした。確かに、遠くの存在に感じる地震など頻度の低い災害に備えて保険に加入するインセンティブを個人に提供することは困難ではあります。一方、二次災害は発生頻度が相対的に高いため、二次災害補償は保険普及率を大幅に上昇させるきっかけとなり得ます。豪雨や地滑りに備えた二次災害補償はお客様が保険の価値に目覚める重要な最初の一歩となり、より遠くに感じる危険に備えて包括的な自然災害保険に加入する意欲を高めます。成熟度が相対的に低いアジア地域では、リスク認知度を大幅に上昇させて力強い保険文化を育む原動力となり得ます。

スイス・リーは中国の茂県とパートナーシップを結び、茂県とチベット高原を付保対象とする大規模自然災害プログラムを中国の県レベルで初めて組成しました。地震に加えて、同プログラムは地滑りや豪雨、公衆安全に関わる事故などの二次災害も付保しています。別事例として、スイス・リーはカリビアン災害リスク保険機関(CCRIF)に対して、風害やハリケーンに伴う猛烈な降雨などの二次災害から被保険者を保護する保険ソリューションを提供しています。

2017年と2018年の大規模災害は、多くの集積再保険プログラムに対して大きな損害額を計上し、二次災害の頻度と重大さに関する想定を見直す必要があることを裏付けました。資本だけでなく利益までを保護するために、集積再保険ストラクチャーを含むテイラーメイドの再保険プログラムを求める声が高まる中、リスクの頻度と重大さを評価する確度の高い手法およびツールは、こうした二次災害リスクを効率的かつ持続的に付保する新たな保険商品を開発するうえで極めて重要な役割を果たすでしょう。

名称とは裏腹に、二次災害は一次災害を超えるとは言わないまでも同等の注目度と経営資源の投入を必要としています。

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