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"The Big Six" ライフスタイルの状態の反映

知見生かし健康増進型保険推進

従来の生命保険商品では過去の病歴やBMI、血圧など、臨床的要因でリスクの判断をしているが、スイス再保険では現在、ライフスタイルに基づくリスク要因の保険商品への活用に着目している。ライフスタイルに基づくリスク要因とは例えば、どれくらい運動しているか、どれくらい睡眠を取るか等、健康や寿命に影響すると考えられる要素のことだ。これまではリスク評価において、まだこれらを充分に活用できていないが、昨今のウェアラブルデバイスや健康関連のアプリの伸展もあり、これらのライフスタイルの状態を正しく理解すること、またモニタリングすることが容易になってきている。本稿では、当社がこの時流を新しい商品開発の機会と捉える理由やその活用について紹介する。

スイス再保険では、生命保険のリスク評価またプライシングにおいて、臨床的要因とライフスタイル要因の両方を考慮に入れたアプローチをPersonal Resilience Suites (PRS)と呼んでいる。PRSの最初の取り組みとして、“The Big Six”- 六つのライフスタイルの状態を活用する保険がある。6つのライフスタイル要因と臨床的要因の健康への影響について、当社のグローバルなチームでは、当社の引受査定マニュアルである“Life Guide”での検証とエビデンスベースで研究が深められている。これらについては、当社ウェブサイト上でも概要を公開している。

6つのライフスタイル要因とは、①運動の頻度、強度や期間についての“身体的活動”、②平均睡眠時間、睡眠の質についての“睡眠”、③食事における量や質を含む“栄養”、④ストレスの有無等関する“精神状態”、⑤アルコール、たばこ等の摂取量に関する“物質の利用”、⑥大気汚染や副流煙など体に害のある状態に接しているかを考慮する“環境”を指す。これら六つのライフスタイルの全てを必ずしも商品設計に含む必要はなく、各マーケットの状況に応じて、導入を検討するライフスタイルの選定を柔軟に行っている。現在は、世界のそれぞれのマーケットで、保険会社と積極的な共同商品開発の意見交換も進めている。

当社の北アジア生命再保険のマネージングディレクターであるウィニー・チンは、「PRSでスイス再保険と保険会社は、顧客とのエンゲージメントサイクルを好循環にする役割ができると考えている。ウェアラブルデバイスや健康関連アプリにライフスタイルのデータを記録することを推奨し、そのデータを活用することで新たな商品を設計することできる。それにより顧客へより良い保険条件の提供ができ、また保険会社も正確なリスク判断ができるようになる。これにより、保険会社の顧客への価値が、保険金をお支払いするだけではなく、健康増進を促すパートナーとなる将来像を見据えることができる」と期待を込める。

当社では、2021年初より日本の保険会社へ、“The Big Six”の商品事例の提案を進めてきた。健康増進という言葉の世間での認知度の高まり、また新しいリスク評価とコンセプトによる保険商品の差別化の可能性から、総じて良いフィードバックをいただいている。一方でライフスタイル要因を活用する健康増進型保険への消費者ニーズ予測の難しさや、消費者がライフスタイルの状態をウェアラブルデバイスでモニタリングできるか等、いくつかの課題も明らかになった。

この他、当社日本支店では2021年6月後半に日本の消費者への市場調査を行い、これら課題への示唆を得た。健康増進への取り組みについては、全回答者の84%が「興味がある」と回答しているものの、、その内の43%は、実際には何も取り組めていないことが浮き彫りになった。。多くの回答者が健康増進の取り組みを継続することの難しさを述べており、効果の実感を促す仕組みが求められている。

次にウェアラブルデバイスの利用状況についてだが、20-30代においての保有率は28%だった。これは40代の1.3倍、また50代の1.7倍であり、若年層での高い保有率が目立つ。記録しているデータは歩数、脈拍・心拍数、消費カロリー、睡眠、血圧と幅広い回答があった。この中で興味深い結果を示したのが“睡眠”で、全回答者の60%が睡眠不足と回答している。睡眠の改善には72%と多くの回答者が興味を示しているものの、実際に取り組んでいるのは16%と、そこには非常に大きな差がある。また、これらのデータの第三者への開示について、70%の回答者は可能としているが、その半数以上は「何かのメリットが感じられれば」と条件付きであることは保険会社が留意すべき点といえる。

続いて、健康増進型保険について、現状では64%が知らないと回答している。しかし、同時に75%が、保険料が安くなる、またはサービスが受けられるなどのメリットがあれば加入を検討したいと回答しており、健康増進型保険への期待と可能性を示す結果となっている。また70%を超える回答者が、メリットがあれば日常的にウェアラブルデバイスを装着できるとも回答しており、これらのメリットを顧客が実感できる商品をどのように設計していくかが重要になると考えられる。例えば、、調査結果で興味と実状に大きな差が見受けられた“睡眠”をトリガーとすることや、ライフスタイルの状態に応じて保険料を調整することで、保険会社は顧客に個別化された保険商品を提供できる可能性があると考えられる。

健康増進型保険とウェアラブルデバイスに関する消費者調査結果からの抜粋

当社のアジアでの取り組み事例の中には、歩数、睡眠の長さ、心拍数の三つのライフスタイルを利用した商品を保険会社と共同で開発し、既に販売を開始しているケースがある。ライフスタイルの状態をウェアラブルデバイスで記録して、それに基づく定期的な保険料の割引を実施するダイナミックプライシングを導入した仕組みだ。ウェアラブルデバイスで取得するデータは保険会社のウェブサイトで集約され、顧客とのエンゲージメントサイクルを構築することに寄与している。

今後、当社では、これらのアジア事例や日本で実施した市場調査の詳細案内、また保険会社、ライフスタイルを記録するデバイスを持つパートナー企業、監督当局などと意見交換を進め、日本での議論を活性化していきたい。“The Big Six”の導入により、保障ギャップを埋めることに役立つ商品設計、より個別化された適切なリスク評価、そして、より良い顧客エンゲージメントプラットフォームを構築することができる。これらに基づく共同商品開発の協議を保険会社と進め、保険商品による顧客の健康増進の取り組みに寄与したいと考えている。

(本記事は2021年8月18日に保険毎日新聞で掲載された記事です。無断転載・無断使用はご遠慮ください。)