経済危機が保険金請求および最終収益に及ぼす影響

損害(再)保険会社がキャジュアルティ分野でとるべき対策とは?

スイス・リー アジア キャジュアルティ部門のアデリン・チュアが、景気低迷の中で損害保険会社がキャジュアルティ分野でとるべき新たな対策について論じます。

スイス・リー アジア キャジュアルティ部門のアデリン・チュアが、景気低迷の中で損害(再)保険会社がキャジュアルティ分野でとるべき新たな対策について論じます。

金融危機に端を発した世界的な景気後退が深刻さを増す中、賠償責任保険に代表されるキャジュアルティ分野は具体的にどのような影響を受けるのでしょうか。

今回の金融危機が銀行やその他の金融機関向けの専門職業賠償責任保険などファイナンシャル・ラインの保険種目に影響を与えることは間違いありません。しかしそれだけではなく、弁護士や会計士のような他の分野の専門職業リスクも矢面に立たされているのが実状です。

米国および欧州市場での教訓は、アジア太平洋地域のアンダーライターが問題点を捉え、潜在的な危険を回避する一助となるでしょう。ここでは、金融危機から影響を受けるであろう保険について述べます。

専門職業賠償責任保険

弁護士

米国では、多くの不動産投資家および貸付機関が弁護士に対し、法的助言が不十分であることを理由に投資損失や資産損失の損害賠償を求めています。保険会社が想定外のリスク引受を避けるには、弁護士が景気の低迷によって失った業務に代わって新たな法的分野に業務を広げようとしているか否かを見極める必要があります。中核分野以外の業務を手がけるということは、よりリスクの高い業務を行うということにつながります。

さらに、住宅譲渡手続きなど、収益が減少する事業が出てくることも考えられ、これが結果として、簡略的な方法を用いる可能性や実務上のミスを増加させる可能性もあります。

会計士

投資状況に関して虚偽の報告をしたとして、投資家が企業の取締役を相手取り訴訟を起こすケースもあり、この場合、それらの企業の会計士も、虚偽報告を幇助したことで告訴されることが考えられます。事業が破綻した場合、原告側弁護士は会計士が経営陣に対する事前の警告義務を怠ったと主張することもあるでしょう。

以下に挙げる例のように、ファイナンシャル・ラインだけでなく、さまざまな賠償責任保険が景気の低迷によって影響を受ける可能性があります。

労働者災害補償保険

最新の調査によれば、景気後退時には労働人口が減少する傾向にあるため、職場での負傷・疾病率は減少するとされています[1]。また、一部の企業は熟練した従業員を優先的に雇用継続するため、これも事故頻度を減少させる一因となり得ます。

一方、労働安全計画に対する費用削減により職場の安全性への配慮が低下することも考えられます。これは事故頻度に悪影響を及ぼす可能性を含んでいます。

人員削減が行われた場合には、不当解雇を理由に従業員が企業に対して訴訟を起こす可能性があります。例えば、2008年度の最終四半期、保険会社ヒスコックスでは元従業員から不当解雇で訴えられた中小企業雇用主からの保険金請求が3倍に跳ね上がりました[2]。コスト削減効果を最大化するために、より給与の高い、高年齢層の従業員を高い比率で解雇した場合には、より高額の退職金を求め訴訟を起こされる可能性があります。通常、景気後退時には、解雇された従業員の就職活動にかかる時間も長期化するため、これもまた保険金請求額を増加させる一因となり得ます。

PL(製造物賠償責任)保険と環境汚染賠償責任保険

コスト削減のために材料を変更し、粗悪な製品を生産する企業が出てくることもあるでしょう。これにより、製品に欠陥が発生する可能性が増し、PL保険の請求額が大きく膨れ上がるようなことにもなりかねません。

製造業の中には、工業用物質の流出や漏出の予防に対する優先順位を下げる会社も出てくることが考えられます。これによって汚染リスクが増大し、環境汚染賠償責任保険に対する請求額に影響が出る可能性があります。

保険会社がとるべき予防措置

では、保険会社はそのような多額の保険金請求を受ける事態を避けるために何をすべきなのでしょうか?以下のような対策が考えられます。

  • 認識:高リスクの既契約者および見込み客を見極め、またリスクの高い業界を特定します。高リスク要因を認識し、最悪のシナリオを予測します。
  • 教育:スタッフと保険契約者に対する教育を行います。常にリスクの高い顧客を特定し、専門家として注意深く検証できるようにスタッフを訓練することが重要です。例えば、雇用慣行賠償責任保険に関しては、保険契約者が適切な雇用慣行および手順をすべて維持し、従業員を解雇する前には弁護士に相談し、解雇される従業員には同意書への署名を義務づけているかどうかを確認する必要があります。
  • リスク管理:保険契約者が実行しているリスク管理対策について定期的に検討を行います。自社の中核事業から新たな事業分野に移行している保険契約者には特に注意を払う必要があり、保険金請求の申請に対して厳重な審査を実行すべきです。

保険料への影響

保険金請求への影響はもとより、景気の低迷は保険料にも影響を与えると予想されます。

収益や人件費の減少がさまざまな保険種目の基準料率に影響を与えると同時に、基準保険料の減少が相当するエクスポージャーの減少より大きくなる可能性が高いことを認識する必要があります。

例えば、現在の製造物責任保険のエクスポージャーは保険契約期間中に製造・販売された製品と、以前に製造・販売された製品(現在も使用されているため)の両方に対するものですが、製品売上高は減少します。したがって、保険料が製品売上高に基づいている場合には、保険料はエクスポージャーよりも大きく減少することになります。同様に、保険料が人件費に基づいている場合、経済危機時には給与が全般的に低下するため、保険料はエクスポージャー以上に減少します。

また、一部の業界では、景気後退が終わると収益や人件費が急速に増加し、対応する保険料よりも早いペースでエクスポージャーが増大する場合も考えられます。このため、保険料を設定する際にはこのような変動を考慮に入れることが必要です。

今回紹介した対策強化は、保険会社が金融危機を乗り越え、収益を確保するために不可欠となります。

 

[1]「労働者災害補償とビジネスサイクル – 概要」、ハリー・シュフォード (Harry Shuford)、全国補償保険協議会、2009年5月8日
[2]  プレスリリース:人員削減の増加は「不当解雇」による損害賠償請求の急増を招く。Hiscox、2009年2月3日


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