日常生活に関する情報を基に死亡率を予測することは可能 ?

保険会社、銀行、または小売業などデータを豊富に持つ企業は、予測モデルの活用により健康な顧客の保険査定プロセスを短縮できる可能性があります。

今年初め Forbes.com に掲載された興味深い記事によれば、小売業者ターゲット社はあるティーンエイジャーの妊娠を、その父親が気付くよりずっと前に予測していました。ターゲット社は無香料の石鹸やコットンなど約25品目の商品を特定し、これらを総合して分析することで購入者の「妊娠予想」率を割り出すことに成功しました。また、妊娠中の女性の出産予定日を絞り込むことができることも判明し、この情報を妊娠の各段階に合わせたクーポンを送付するために利用しています。

この非常に興味を引く記事は、かねてよりスーパーマーケットがインテリジェントデータをどのように活用してきたかの一例を示すものです。

インテリジェントデータを活用した別の例として、個人のダウンロード履歴に基づいておすすめの動画や歌を紹介する YouTube や iTunes が挙げられます。また、サイト上での好みや行動パターンを基にアルゴリズムを使用して「恋人」候補を提案する出会い系サイトも存在します。

これらの例と保険にはどのような関係があるのでしょうか。損害保険会社は、クレジットスコア(個人の信用履歴によって算出される点数)に基づいて自動車保険を提供するなど、従来から保険商品の提供にインテリジェントデータを利用してきました。しかし、生命保険会社にとってはこれは未開の分野となっています。

では、日常生活に関する情報に基づいた死亡率予測は可能なのでしょうか。

スイス・リー ライフ & ヘルス アンダーライティング部門、グローバルヘッドのポール・ヘイトリーは先ごろオーストラリアを訪れ、プレディクティブアンダーライティングが生命保険業界に「大きな変革をもたらす」と語りました。

ヘイトリーは、「プレディクティブアンダーライティングとは、健康状態の把握のために消費者のインテリジェントデータを利用することをいいます。ライフスタイル要因と死亡率に相関関係があるかどうかを突き止めることを前提とし、それに基づく保障モデルを構築することにより査定プロセスに変化をもたらします。」と説明しています。例えば、スイス・リーの保険パートナーのなかには、既存の査定プロセスに含まれていた30 以上の健康関連の設問の数を、予測モデルにより「優良な潜在顧客」とされた場合について 1つまで減らすことに成功した保険会社もあります。

このような成果を達成するには、最終査定結果など個人の健康(リスク)を示すデータ、および銀行口座やポイントカード情報などの独自の記述データという、比較可能な 2 つの非個人化データソースが必要となります。これらを分析し相関関係を浮き彫りにしたうえで、健康状態と相関関係があると判明した「予測因子」と「予測変数」を組み合わせることによりアルゴリズムを構築し、個々の生命保険申込者について標準保険料が提示される可能性を格付けしていきます。

ヘイトリーはさらに、「従来の査定が保険申込者の中から少数の不健康な人々を特定することを目標としてきたのに対し、プレディクティブアンダーライティングは、保険に申し込んでいない健康な多数派へのアプローチを可能にします」と指摘しています。

顧客情報はどのようなものでも健康状態の予測に利用できます。ヘイトリーは、「データは語る」とも述べています。ATM の使用頻度といった一見無関係に見えるライフスタイル要因も予測に役立つ可能性があります。

表 1 に示すとおり、英国のバンカシュアラーが自社の顧客基盤について調査した結果によれば、40才以上で1ヵ月にATMの使用回数が15回未満の人は、40才未満でATMの使用回数が15回を超える人に比べて、生命保険の申込を謝絶されるか保険料が割高になる可能性が高いことがわかりました。

「生命保険販売の主要な障害である長々とした査定プロセスや申込書記入にかかる費用および時間などを軽減することにより、プレディクティブアンダーライティングモデルは生命保険の新たな形となり得ます。通常の査定プロセスを必要とする商品と同水準の価格で、顧客満足度を引き上げることが可能です。」

表 2 は、プレディクティブアンダーライティングのアプローチと既存の通常査定商品とを比較したものです。

2: 伝統的な申込とプレディクティブアンダーライティングによる申込の比較

スイス・リーは過去 12 か月間で 2 社の英国バンカシュアラーと共同でプレディクティブアンダーライティング商品を開発・導入しており、この分野で実績を挙げています。銀行ではクレジットスコア技術を貸付の事前承認に利用しているため、この手法の生命保険への応用は自然の流れと言えます。

ポール・ヘイトリーは、「厳格な査定プロセスを持つ一方、それがセールスの障害になっていると感じており、予測モデルの構築に十分な質と量のデータを保有している保険会社にとって、このモデルは有効といえそうです」と提案しています。

2012年6月