中国賠償責任保険市場動向

北京を拠点とするスイス・リー損害保険引受チームのフェイフェイ・フォードが中国の賠償責任保険市場の最新動向と課題について論じます。

中国では、2006年に第三者賠償(対人・対物)事故を担保する自動車保険が全国で強制加入となり、過去3年間で自動車保険需要が急増しました。しかし、自動車以外の賠償責任保険は依然として大きく遅れており、現在中国全体の損害保険元受保険料のわずか3%を占めるにすぎません。

このように中国の損害保険市場は発展初期の段階にありますが、その賠償責任保険事業は有望で、興味深い傾向がみられます。

商品の革新

中国市場には、3つのいわゆる「伝統的な」賠償責任保険、すなわち使用者賠償責任保険、一般賠償責任保険、製造物賠償責任保険があります。過去数年にわたり多くの外国保険会社の子会社や再保険会社が中国市場に参入したことにより、成熟市場で培われた経験や専門知識が導入されました。このような状況の下、専門職業賠償責任保険、医療過誤賠償責任保険、会社役員(D&O)賠償責任保険、環境汚染賠償責任保険などさまざまな新商品が徐々に中国に紹介され始めています。さらに、従来からの一般賠償責任保険は、一般施設の失火責任のみを担保する賠償責任保険、教育施設専用の賠償責任保険、ホテル・旅館業向け賠償責任保険、特殊な什器・機器を対象とした賠償賠償責任保険などに細分化されました。

このような商品の導入により、賠償責任保険事業はより洗練されていくと考えられます。保険ユーザーが、単純な従来型の賠償責任保険よりも、現在の中国のさまざまな被保険者の多様化したニーズにより十分に応えられる新しい商品を利用することは必然だからです。 

さらに重要なことは、保険加入率が非常に低いため、元受保険会社は引受技術および商品の改善を基に、より多くの潜在的被保険者が賠償責任保険商品を購入するように惹きつけなければならないということです。

このトレンドにより再保険の需要も増加しました。特に、国内の元受保険会社が新たな保険商品を市場に送り出す場合には、保険約款の制定、保険料の設定、アンダーライティング、リスク管理、事故処理などに関して国際的な再保険パートナーからの強力な技術的支援を必要とすることが多々あります。中国の保険規制当局でさえも、保険会社が特に複雑な商品を開発する場合には、グローバルな再保険会社の支援を求めることを奨励しています。

これは再保険会社と元受保険会社がお互いに付加価値を提供できる分野です。再保険会社は元受保険会社を通じて現地事業へのアクセスを得ることができ、元受保険会社は再保険会社から資本面と技術面両方の支援を得ることができ、双方にとって有益といえます。

政府支援が鍵

「政府が指導し市場が主導して発展する」という原則の下で、政府は賠償責任保険の推進と発展に決定的な役割を果たしています。これは賠償責任保険商品の利用範囲が大きく拡大したにもかかわらず、多くの商品があまり売れていない理由を解明しようとする上で特に重要です。 

事実、大規模な事業にまで発展した賠償責任保険商品はわずかであり、教育施設賠償責任保険、高リスク産業の製造安全責任、医療過誤などを対象とした商品が挙げられます。

詳しく調査すると、これらの商品が急速に発展した背景には、主に以下のような強力な政府支援が挙げられます。

 

  • 地方レベルでの強制保険化
  • 地方自治体による保険料の支払い
  • 企業の保険加入を促進する奨励金
  •  行政措置による準強制保険化

 

例としては近年急速に発展した教育施設賠償責任保険があります。これは、さまざまなレベルの政府や教育当局からの強い後押しによって脚光を浴び、一部の都市では普及率100%に達しました。比較的裕福な地方自治体政府の中には、直接保険料を支払っているところさえあります。また、条例等により「強制保険化」して学校が教育賠償責任保険に加入するよう義務づけている地方政府もあります。

急速な進展が見られるもう一つの分野は、安全生産監督管理総局(SAWS)が強力に支援する、高リスク産業(化学、花火など)の製造安全責任保険です。現地のSAWSは、非順守企業に対する操業許可の留保のような行政措置を利用して、監督下にある企業が特定の現地元受保険会社で構成された保険プールから製造安全責任保険を購入するようにしています。

対照的に、元受保険会社は国内の製造物責任保険と会社役員賠償責任保険を自力で発展させようとしましたが、企業からの需要が非常に低く、政府の強力な奨励策もないことから全く発展する気配がありません。

対処すべき課題:低い需要と高い契約獲得コスト

中国における賠償責任保険の発展には大きな障害が2つあります。一つは、保険に対する認識の低さと中国社会が訴訟を好まないことによる社会全体の保険に対する需要の低さです。

もう一つは保険会社の販売経路が限定されていることです。このため、多くの顧客に賠償責任保険を販売しようとすると、新規契約獲得コストが過度に高くなります。

賠償責任保険の販売には、高度なスキルと時間をかけた説明が必要となるため、元受保険会社の既存の営業要員で賠償責任保険を販売するのは困難です。その結果、営業担当者は賠償責任保険を売ることに時間や労力を投入しないようになりがちです。多くの保険料を稼げる可能性の高い単純な自動車保険を販売した方が簡単で、早く結果を出すことができるからです。 

しかし、政府の強力な支援(通常は特定の地方でのプロジェクトや保険プールを組織します)があれば、広範囲にわたる保険の加入者が保証されます。元受保険会社の選定には入札が利用され、このプロセスへの参加を奨励するために、応札する元受保険会社には一定の保険料ボリュームが保証されます。

従って政府の支援が強ければ強いほど、賠償責任保険は発展します。現在の状況では、これが賠償責任保険事業を発展させる最も費用対効果の高い方法です。

つまり、賠償責任保険事業の新たな収入源を開発するには、元受保険会社は両極端な方法に取り組む必要があります。一つは、競合他社との差別化を測るために新商品の開発を続けること、もう一つは費用対効果の高い方法で大規模に成長する可能性の高い賠償責任保険を取り込めるように政府の政策を利用することです。

 

2009年10月


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