スイス・リーのシグマ調査「2013年の自然災害と人災」:世界の保険損害額は450億米ドル

  • 2013年の自然災害と人災による経済的損害額は1, 400億米ドル
  • 2013年の世界の保険損害額は約450億米ドル、洪水と雹が大きな割合を占めた
  • 2013年の自然災害と人災による死者の数はおよそ26, 000
  • 本シグマ誌の気候変動特集では、世界各地の気温の上昇が異常気象の頻度と強度、および期間の変化をもたらすと想定されることに言及

最新のシグマ調査によると、2013年に自然災害および人災による世界の保険損害額は450億米ドルと、前年の810億米ドルを下回りました。そのうち370億米ドルは自然災害によるもので、ヨーロッパの雹と世界各地を襲った洪水が大部分を占めています。

自然災害による経済的損害は総額で1,400億米ドルと前年の1,960億米ドルから減少し、10年間の平均である1,900億米ドルを大きく下回りました。災害による犠牲者の数は前年の14,000人から26,000人に増加しました。 

2013年最大の人的損害をもたらしたハイヤン(台風30号)

アジアは経済的損害と犠牲者数の面で自然災害から最大の打撃を受けました。11月にフィリピンを直撃したハイヤン(台風30号)は、豪雨や高潮とともに史上最大級の暴風を発生させました。死者・行方不明者数は約7500人にのぼり、400万人以上が住居を失いました。2013年に2番目に大きな人的被害をもたらしたのは6月にインドのウッタラカンド州を襲った洪水で、犠牲者数は約6,000人となりました。 

2013年に大きな損害を被ったヨーロッパ

ヨーロッパは2013年に自然災害から巨額の損害を2度被りました。5月から6月にかけて4日間続いた豪雨により中東欧では洪水が発生し、ドイツ、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランドは大規模な被害に見舞われました。経済的損害は総額で165億米ドル、保険損害は41億米ドルにのぼりました。それから間もない7月下旬には、ドイツとフランスの一部が激しい降雹による被害を受けました。この嵐はドイツの人口密集地を襲い、最新の概算によると保険損害額の総額38億米ドルの大部分を占めており、世界で史上最大の雹による災害となりました。

2013年は世界各地で洪水が発生しました。北米最大の被害を出したのは、カナダのアルバータ州カルガリーと周辺地域で、6日間降り続いた豪雨の後に発生した洪水でした。経済的損害は47億米ドル、保険損害は19億米ドルに達しました。オーストラリア、アジア、南米でも洪水による損害が発生しています。

: 2013年の自然災害による高額保険損害額上位10

 

日時
(開始)

保険損害1
(10億米ドル)

経済的損害
(10億米ドル)

事象 

 

 

1

2013/5/27

4.1

16.5

洪水

ドイツ、チェコ共和国など

[2]

2

2013/7/27

3.8

4.8

雹を伴う嵐

ドイツ、フランス

[2]

3

2013/6/19

1.9

4.7

洪水

カナダ

[2]

4

2013/5/18

1.8

3.0

雷雨、竜巻  (オクラホマ州ムーアでEF5の竜巻)

米国

[3]

5

2013/3/18

1.6

2.2

雷雨、竜巻、雹

米国

[3]

6

2013/11/8

1.5

12.5

台風ハイヤン

フィリピンなど

[4]

7

2013/10/27

1.5

2.8

暴風

ドイツ、デンマークなど

[5]

8

2013/5/28

1.4

2.8

猛烈な雷雨、竜巻、大粒の雹

米国

[3]

9

2013/4/9

1.2

1.6

冬の嵐、氷、竜巻、豪雨

米国

[3]

10

2013/9/29

1.1

10.3

台風フィートウ

中国、日本

[2]

[1] 財物および事業中断(生命および賠償責任損害を除く)
[2] スイス・リーによる概算
[3] プロパーティ・クレーム・サービシズ (PCS)認可取得済み
[4] フィリピン保険協会
[5] ペリルズAG

全体としては、2013年の世界の保険損害額は2012年のそれを大幅に下回りました。これは主に米国でハリケーンの発生数が極端に少なかったことが理由です。とはいえ、米国は世界で保険の普及率が最も高いこともあり、昨年の保険損害総額は世界で最も高額でした。これは、数回発生した竜巻とそれに伴う雷、および冬の嵐によるものです。 

世界の保障ギャップは拡大が続いている

リスクの防止策と軽減策は近年、進歩を遂げてきました。例えば、2002年に中東欧地域が大規模な洪水に見舞われた後、洪水対策が強化されていなければ、昨年、中東欧で発生した洪水ではもっと深刻な被害が出ていたでしょう。同様に、10月にサイクロン・ファイリンが最高時速260キロの暴風を伴ってインドのオリッサ州に上陸した際も、予め設計された非常に効果的な避難路のおかげで何千人もの人命が助かりました。

しかし、このサイクロンでは住宅約10万戸、130万ヘクタール以上の耕地が壊滅的な被害を受けています。 スイス・リーのチーフ・エコノミストであるクルト・カールは次のように述べています。「サイクロン・ファイリンによる経済的損害は総額45億米ドルに上ると見られますが、保険で補てんされた損害はごく一部に過ぎません。社会がこのサイクロンや台風ハイヤンのような災害に対処する上で、保険業界はさらに大きな役割を果たすことができるはずです。」

損害総額と保険損害との差である保障ギャップは過去40年間で徐々に拡大してきました。現在の経済発展、人口の増加、都市化に伴い、災害による損害額は増加し続けています。

図表 1: 経済的損害と保険損害、 1970 – 2013


保険損害額 + 保険により補てんされていない損害額 = 経済的損害額
出典:スイス・リー、シグマ災害データベース

気候変動に対するレジリエンス(回復力)の推進

今回のシグマ調査では、温室効果ガスの排出増大が原因と広く認められている気候変動について特集を組んでいます。工業化と人間の活動によって温室効果ガスが大幅に増加し、自然変動とともに世界の気温を押し上げています。

気温の上昇により、今後は異常気象がより頻繁に発生することが予想されます。温室効果ガスを削減する対策が何ら講じられなければ、こうした異常気象による災害が、増加している損害額のますます大きな部分を占めるようになる見通しです。シグマ調査が示すように、例えば、米国のメキシコ湾沿岸での気候変動により想定される経済的損害額は2030年までに215億米ドルに増大する可能性があります。しかし、スイス・リーのサステナビリティのグローバルヘッドであるデビッド・ブレシュは次のように述べています。「費用効果の高い適応策は複数あり、これらを総合すれば損害を35%減らすことが可能です。養浜、堤防、屋上緑化、建築基準法の強化などが最も有望な対策として考えられます。」

リスクの防止と回避、さらに災害のリスク管理策によって、気候変動に対する回復力を高めることができます。災害発生後に資金を調達する助けとなるリスク移転ソリューションもまた、回復力の強化に寄与するものです。リスク移転は単独で機能するわけではありません。気候変動への適応戦略における不可欠な一部を担っているのです。

2: 2013年の自然災害の数、被害者数、保険損害と経済的損害

 

 

 

 

保険損害 

経済的損害 

地域 

 

犠牲者 

%

10
米ドル
*

%

10
米ドル
*

 %

北米

52

249

0.9%

19

42.0%

32

22.7%

南米・カリブ海諸国

20

1055

4.0%

2

5.4%

9

6.3%

ヨーロッパ

38

1167

4.4%

15

33.8%

33

23.4%

アフリカ

44

1751

6.6%

1

1.4%

1

0.7%

アジア

125

21294

80.2%

6

12.5%

62

44.1%

オセアニア・豪州

6

21

0.1%

1

2.9%

3

2.0%

海洋/ 空中

23

1007

3.8%

1

2.2%

1

0.8%

世界 

308

26544

100.0%

45

100.0%

140

100.0%

*四捨五入
出所: スイス・リーエコノミックリサーチ&コンサルティング

2014年3月26日