ハイパーコネクティビティと保険の様相

頻繁にネットワーク接続を使用し、予期せぬ結果への対処を余儀なくされる人々が増えています。各国政府も、この状況に着目し始めました。近年、中国や日本、韓国の「インターネット依存症」や「ネット断食キャンプ」といった話題が大きなニュースとして取り上げられています。台湾の国会は今年2月、18歳以下の子供が「合理的な時間」を超えて電子機器を使うことを違法とする法律を成立させました。同じ月、シンガポールでは「遠隔ギャンブル法」が施行され、オンラインギャンブルが厳しく統制・制限されています。

このネット接続の拡大は「人」対「機械」の関係に限られたことではなく、「機械」対「機械」のコミュニケーションにも及んでいます。例えば、よくある電話も、現在は次のようなものに接続されています。

  • ヘルスモニターや時計、スポーツシューズセンサーなどのウェアラブル端末を介して私たちの体と
  • 防犯カメラやテレビ、パソコン、その他デバイスなどを介して私たちの自宅と
  • エンジン遠隔始動装置、追従システムなど各種機能を介して私たちの車と
  • ソーシャルネットワークやプロフェッショナルネットワークを通じて私たちの友達や同僚と
  • モバイルバンキング、バーチャルウォレット(仮想財布)などのようなものを通じて私たちの家計と

例を挙げれば切りはありません。私たち人間同士、そして私たちを取り囲む様々なデバイスとの間で常時コミュニケーションが取られている状態のことを「ハイパーコネクティビティ」(超接続性)と呼びます。

推計によると、世界で30億人近くが現在インターネット接続環境にあり、その数は急速に増加しています。とりわけ、約40億の人口を抱えるアジアではその3分の2以上がまだインターネット接続環境にはないと推定されており、この地域には成長の可能性が多大に秘められています。モバイルブロードバンドだけを見ても、GSMAインテリジェンスの推定では、アジア太平洋地域における接続人数は現在の10億人から2020年までには30億人近くへ増加するとみられています。

では、ハイパーコネクティビティの状態が(ますます)進む世界において事業を行うということは、保険会社にとってどういうことを意味するのでしょうか?労働災害補償を提供する保険会社であれば、人々のライフスタイルに合わせてハイパーコネクティビティの影響を考慮し、補償内容を変える必要が出てくると考えられます。現在の私たちは、どこにいるかや何をしているかに関係なく世界と接続することが可能です。社会の常識は変わりつつあります。時間を問わず遠い世界の果てまでも、仕事は私たちにつきまとってきます。多くの人が一日の大部分をパソコンの前に座って過ごし、これは健康に悪い影響を及ぼします。『ハーバード・ビジネス・レビュー』2013年1月号も「座りっぱなしは喫煙と同じである」との記述を載せています。

医療面では、オンライン診断が自己診断に利用されることも多くなってきていますが、専門職業賠償責任を扱う保険会社は、これに関して注意が必要です。アクティビティトラッカーやモバイルアプリを使えば私たちの日常の活動記録を残すことができ、医師もこのような情報を閲覧することができるようになる日は近いと思われます。しかし何らかの誤診やプライバシーの侵害があった場合、誰がその責任を負うかはまだ明確にされていません。

今年に入って米国で第2位の医療保険会社であるアンセムは、自社のデータベースがサイバー攻撃を受け、7,800万人以上の個人情報に不正アクセスがあったことを公表しました。そしてこの公表から24時間以内に、同社を相手取った最初の提訴が行われました。この事例は今後象徴的な出来事として、データ保護やプライバシーの侵害に対する法的な救済策についての基準となっていくものと思われます。法的な結末はともかくとして、アンセムの信用はすでに損なわれ、その修復には相当の時間を要することが想定されます。

ハイパーコネクティビティの世界では、不満を持つ消費者は素早くソーシャルメディアに向かい、自らの体験を世界へ発信します。あいにくこの状況では、悪人によって間違った情報が拡散される余地も残されてしまいます。企業は、あらゆる悪意あるコンテンツや誤解を招く内容に対して急な対応を迫られる状況に備え、常に警戒しなければなりません。真偽を問わずニュースは蔓延し、評判を落とし、資本市場にまで影響を与え兼ねません。現在のところ、完全な故意による損害を賠償する保険はほとんどありません(ただし、サイバー保険によって補償される場合もあります)。一方で、金銭的な損失を補償する商品は、保険金請求の頻度や金額が増加していくものと予想されます。

その中でも保険会社にとって、ハイパーコネクティビティによる最大の影響は自動車保険にあるものと思われます。無人運転車はすでに試験走行が行われており、私たちが今運転している車にも様々な関連機能が加えられていくことでしょう。近い将来、車には衝突を未然に感知する機能が標準的に搭載され、必要に応じて運転手の代わりに制御するようになるかもしれません。このようなシナリオに、自動車保険はどのように順応していくのでしょうか? 現在、アジアの保険会社の間ではテレマティクスの利用がほぼ普及していません。その主な理由はテレマティクス装置のコストです。しかし自動車業界を中心に調査を行っているSBDによると、今後新車の90%以上にテレマティクスが搭載されていくと見られています。保険会社は技術にも素早く追いつき、運転行動の特性や盗難の頻度、保険請求の支払い方法などの変化も保険契約に織り込んでいく必要があります。

自動車は安全性が高まっているだけでなく、「シェアリング・エコノミー(共有型経済)」の登場に伴い所有形態のルールも変わりつつあります。Uber、Airbnbなどのサービスが一般化しつつある今、人々は車や住宅を共有することについてますます抵抗がなくなってきています。しかし賠償責任の構造はまだ調整段階にあります。保険商品も進化する必要があります。

一般的に法律や規制の変更は、急速に変化しているハイパーコネクティビティ社会よりも一歩出遅れています。今後賠償責任の構造がどのように変わっていくのか、さらに保険業界がお客様の新たなニーズにどのように対応していくことができるかという重要な点が、まだはっきりと見えてきていません。

みなさんはどうお考えになるでしょうか? この他にも影響の及ぶ領域はあるでしょうか?

2015年4月


2020年以降、どのような世界が私たちを待っているのでしょうか?

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出典: 保険毎日新聞2017年10月30日

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