フロンティアへの挑戦

モーゼス・オジェイセコバ - スイス再保険会社 アジア再保険部門 最高経営責任者

我々の世界は、ますます大規模で複雑なリスクに脅かされています。ユーロ危機、高齢化問題、自然災害などをすぐ挙げることができます。また、アジア太平洋地域は、その非常に多様性に富んだ文化、経済、保険の状況に加え、多くの新興国の「ホーム」として極めて重要な地域であることから、他の地域とは異なるリスク景観を示していると言えます。

共に事業を展開している保険会社と再保険会社にとって、アジア太平洋地域には多くのチャンスがあります。とはいえ、生命保険、損害保険の両方で、大きな課題もまた同じく存在しています。これらの課題は、それぞれ異なる市場の数だけ多数存在し、また多様なのです。

生命・医療保険

保障ギャップ問題

アジア太平洋地域では、生命保険が普及しているにもかかわらず、死亡保障に大きなギャップが見られます。スイス・リーの調査によると、2010年末時点での保障ギャップの規模は、アジア太平洋地域の12の市場で41兆米ドルに上りました。1)

この保障ギャップ問題に取り組むため、再保険会社は保険会社と共に戦略を打ち出しています。これには、より魅力的な商品の開発、一般大衆に向けた生命保険の必要性についての啓発、販売経路の多様化などが含まれます。

また、世界は急激な高齢化にも直面しています。国連によると2) 、アジアでは今後100年間で、65歳以上が占める割合が4倍以上に膨れあがると予想されています。このような傾向は、保険業界に次のような数多くの重大な問題を提起します。急激に高齢化が進む中で、どのようにして老後資金のニーズに応えるのか?  高齢化に伴う病気、障害、従属人口問題にどのように対処するのか?  高齢化は医療費や社会保障費にどのような影響を与えるのか?

一方、より豊かな社会、医療費のインフレ、政府による医療費支出の増加などの多くの要因が、医療健康保険へのニーズの増加に寄与しています。これらのニーズを満たす医療健康保険は、政府支援の社会保障制度、民間の保険、個人の自己負担などにより賄われています。

アジアでは、国が負担する医療費支出額が国により大きく異なる(台湾の26%から日本の81%まで)ため、高齢化の進む国でも、それぞれに直面している問題は違います。医療費のインフレ率が高水準にとどまり、政府予算がより厳しい制約下にある中で、アジアの多くの人々は自分自身で医療費を負担する必要があります。ですから、多くの社会にとって、民間の保険会社が資金調達やヘルスケアリスクの管理においてさらなる責任を担ってくれることは好ましいことなのです。これは同時に、キャパシティやリスク管理の専門知識のみならず、市場に関する深い知識や柔軟性のあるソリューションを提供できる再保険会社をパートナーとすることの必要性を高めるものでもあります。

医療保障ギャップは高齢化する社会傾向と相まって、退職後の医療保険ソリューションに対するさらなるニーズを呼び起こすでしょう。保険会社には、退職後の生命・医療保険ニーズを支援するための資金を用意することで、そのギャップを埋めるチャンスがあるのです。

元受保険会社に限らず、再保険会社も、リスクに対する認識の向上促進、先進国市場からの知識の移転、地域市場の要件を満たす新商品の構築を支援するための責任とリソースを有しています。再保険会社は、リスクの分担ばかりではなく、保険会社と協力して最良のソリューションを構築し、革新し、販売する上で、重要な役割を担っているのです。

損害保険

自然災害問題

2011年、アジア太平洋地域の自然災害による経済的損害額は2,900億米ドルに上り、そのうち保険で補てんされた損害額は4分の1以下の680億米ドルでした。この事実からもわかるように、アジアの新興国市場における保険普及率は低いのです。

アジア太平洋地域の再保険会社と保険会社にとっての重要な課題は、損害のエクスポージャーと相関関係をよりよく理解することです。例えば、東日本大震災の損害の大半は地震そのものではなく津波に起因するものでした。同様に、クライストチャーチの地震では、土壌の液状化によって多くの建物が構造上脆くなったことが、保険損害が生じた原因です。またタイの洪水では多くの事業が中断を余儀なくされ、構外利益保険の請求が発生しました。これらは、保険損害に大きく影響した二次的損害要因の例です。これまでのところ、保険会社はこのようなリスクを適切に考慮し、保険料率や損害モデルに組み入れることに成功していませんでした。

事業の成長を持続可能なものにするには、再保険会社は今後早急に顧客と密に協力し、全ての市場におけるリスク・エクスポージャーと商品の適正料率をよりよく理解する必要があります。より優れたリスク評価と管理には、データの品質の大幅な改善が必要です。

スイス・リーでは、独自の自然災害モデルを継続的に改良し、さらには大規模な損害が発生する可能性がある地域の新たなモデルを開発しています。そのうちの一つが、最近発表されたスイス・リー・グローバル・フラッドゾーン™です。これは、世界各地の洪水による危険情報の詳細を提供するものです。

最大の課題

今後10年間、アジア太平洋地域、とりわけ新興アジア諸国は、世界の保険事業の成長をリードするでしょう。元受生命保険料は年率で8%、損害保険料は9%伸びると予想されています。再保険会社は、技術的な専門知識、およびピークリスクに対するキャパシティを提供し(これにより元受保険会社の業績は平準化します)、新しい商品を開発することで、この成長において重要な役割を担うでしょう。ただし、保険会社も再保険会社も、地域の最大限の可能性を実現するためには、アジア太平洋地域の市場の基調をよりよく理解し、現地の基準に合わせ、よりニーズに適合した商品を考案する必要があります。


[1] 「死亡保障ギャップ(Mortality protection gap)」とは、家族を扶養していた勤労者の死亡後、その扶養家族がそれまでの生活水準を維持していく上で必要な資金と、利用可能な資金の間の格差のこと。出典:スイス・リー Mortality Protection Gap: Asia-Pacific 2011

[2] 国際連合、経済社会局、2007年版世界経済社会調査-高齢化する世界における発展

2012年8月


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